ペットシッターの仕事が特に忙しくなるのは、夏休みやGW、お正月など大型連休のとき。
この時期は猫の手も借りたいほどスケジュールが過密になり、「ペットシッターの仕事が忙しくて自分のペットのお世話をする時間がないから、ペットシッターさんを依頼する」なんて冗談のような話しも実際にあったりします。
もちろん、そんな忙しい日ばかりではなく、中には招き猫を置きたいほど暇な日もあるのですが・・。
そんな、忙しい日も暇なときも借りたい「猫の手」。でも、お世話の際に気をつけなければいけないことって、たくさんあるんです。
とっさに飛び出す猫パンチ
ニャァ〜と近寄ってきてスリスリ、体を撫でてあげるとさらに喜んでゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らす猫。でも、何が猫の逆鱗に触れたのか、そのゴロゴロが嵐を呼ぶ落雷の如く、急にピャーッと攻撃に転じることがあります。
これは『愛撫誘発性攻撃行動』と呼ばれるもので、突然噛みついたり猫パンチを放つ、いわば本能の一種です。
猫の俊敏性から繰り出される猫パンチは、ミッキー・ロークのそれとは違い、爪を立てられたら薄手の時期は特に、簡単にケガを負ってしまいます。鶏を一発で気絶させるその威力は、柔軟に大きく振り回せる猫の骨格に起因します。鎖骨のほとんどない犬と違い、猫は胸骨や肩甲骨と筋肉によってつながっているため、肩が固定されません。そのため色々な方向から、器用に鋭い猫パンチを繰り出すことができるのです。
もちろん、フーフー興奮して攻撃性を露わにしている猫に近づいていくことはありませんが、この「愛撫誘発性攻撃行動」は注意したいところですね。
一見突然の変化のようにも見えますが、実は人間が“猫の許容限度”を超えてしまっていることがほとんどなのです。
猫の利き手を見極める!?
基本的に猫が触れられて喜ぶのは、自分では直接舐められない耳の後ろや首筋、頬など人にすり寄るときにくっつけてくる部分です。
特に耳の後ろには猫をリラックスさせるツボがあるようで、初めての猫が向こうから近付いてきてくれたなら、母親に舐められている感触、また仲間同士のそれのように、まずはこの辺りから攻めてみるのもいいでしょう。
しかし、そんな気持ちの良いスポットでも、猫にはそれぞれ体を委ね触らせている「許容時間」というものがあり、気分や環境、シチュエーションによってもその長さは変わってきます。
この辺が猫の気ままさの象徴なのかもしれませんが、ついさっきまで気持ち良さそうにしていても、「もういい」と感じると、反射的に手が出てしまうのです。ツンデレここに極まれし、ですね。
ちなみに猫にも利き手(足)があるようで、イギリス人の研究家ウェルズ氏の実験データによると、オスはとっさに左手が出て、メスは右手が出るのだそうです。
猫が望んでくれるなら、ぎりぎりまでスキンシップをはかりたいペットシッターにとっては、これは朗報です。性別によって注意すべき“黄金の右”、または“神の左”を見極められますが、しかし何もそんなぎりぎりのリスクを犯さなくても、その予兆を察知して根本的に回避するのがプロですよね。
“噛みつき”や“手”が出る予兆を知ろう
「愛撫誘発性攻撃行動」を引き起こす一歩手前で、猫は「耳を伏せる」「瞳孔が大きくなる」「体をこわばらせる」「触られている手の方を見る」「尻尾をパタンパタンと動かす」など、良く観察すると何らかのサインを出しています。
これは、「十分やであんがと〜」「もうええて自分〜」と、既に満足しましたよ、という合図です。
しかし私たち人間は、ついついサービス精神でもっともっとと、大きな手で長く撫でてしまいます。「あ〜だんだんうっとうしなってきたで・・もやめてくれへんかなぁ・・」という合図を発しているのに、それでもやめてくれないと、「やめちゅーとんねん!」と攻撃に転じてしまうのです。関西弁は特に意味はありません。
この予兆のしぐさを見極められればベストですが、一番セーフティなのは、常に早め早めでやめてしまうことです。これは、犬や猫との「遊び」にも通じるところですが、何事も飽きるほど満足させてしまうのは、もったいないことなのです。「楽しいなぁ、もっともっと」「気持ちいいなぁ、極楽極楽」と、ペットがポジティブで良い状態のとき、もの足りないなと思うくらいのタイミングで、止めてしまうのが吉です。
楽しさや満足の底を見せないことで、“次がある”とずっと期待を抱かせておくことができます。
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