「少しくらいころころしていた方が可愛い」「うちのコは食べるの大好きだから、ついついオヤツを上げすぎちゃう」と、飼い主さんによっては、肥満傾向にあるペットを受け入れているケースも多いかもしれません。今は人間もペットも飽食の時代ですから、安価で保存も利く嗜好性の高いフードがたくさんありますからね。しかし、当然“太り過ぎ”は、万病の元。いつまでも長く健康でいてもらうためには、食事や体重管理にも気を配りたいところですね。
『食事』も『運動』も飼い主さんに管理されているペットは、私たち人間と違って、自ら一念発起して厳しいダイエット(カロリー制限やつらい運動)に挑む必要はありません。その代わり、飼主さん次第で、いくらでも健康的に適正体重を維持することができるのです。
ペットシッターSOSでは、お客様の要望に沿ってゴハンやお散歩などのお世話をさせていただきますが、いつでもこうしたダイエットのことはご相談ください。専門知識を身に付けたスタッフが、飼い主様と共に、ペットに無理なく楽しい適正食事と体重管理をサポートさせていただきます。
人とペットの『食べ方』の違い
現代は、季節を問わず美味しいものがあふれています。体が資本の私たちペットシッターにおいても、医食同源、エネルギー源となる食べ物には気をつけたいところです。
ちなみに、人が食べ過ぎないコツは“良く噛むこと”だそうです。犬や猫はほとんど咀嚼せずに噛み千切っては丸呑みしますが、それは人間よりも強力な胃酸が消化パワーを発揮してくれるから。さらに言えば、人間は噛んで唾液中のアミラーゼ(消化酵素)を分泌し消化機能を高めますが、犬や猫の唾液にはアミラーゼが含まれておらず、骨など堅いもの以外は“噛む必要が無い”ということがいえます。
私たちが「お腹いっぱい」と感じるのは、胃が食べ物で満たされたからではなく、満腹中枢が刺激されることによる脳からの指令なので、咀嚼回数を増やし満腹中枢を刺激することで、食べ過ぎを予防し、食べ過ぎる前に満腹感を得ることができるというわけです。
食べ方ひとつとっても、ペットと人ではこれだけ大きく異なります。
人もペットも、食べ過ぎにご注意を
「あっという間に食べてしまうから足りないのかしら?」目をくりくりさせながらオカワリをせがむコに、喜ぶ顔見たさでついついおやつなどを上げ過ぎてしまえば、それはもう肥満への第一歩。
狩り生活では、いつ次の獲物にあえるかわからないため、もともと犬や猫には食いだめする習性があり、そのため常に胃袋を満たそうとするので、お腹がいっぱいでもおいしいものがあれば何でも欲しがるのです。
「甘いものは別腹」なんて現代医学を無視した言い訳を長年に渡り正当化させてきた私たちなら、気持ちは分かるはず。ただ、ここで気をつけていただきたいのが、“ペットの擬人化”です。「こんな小さいジャーキーだから、もう1本くらい上げてもいいかな」と、人間感覚で量をはかってしまうことです。
これは体重比で考えれば、私たちが追加で太巻き1本まるまる食べるようなものです。うぅ・・太巻きは無理、だけどバームクーヘンならいける、って?・・・それがまさに「甘いものは別腹マジック」です。腰周り“太巻き”化計画から抜け出すためには、ジャーキー1本にもカロリーを考慮した給餌が必要です。
犬と猫の食性の違い
フードを与えると、犬が一気に平らげてしまうコが多いのに対し、猫は少しずつ、何回にも分けて食べる傾向があります。人間感覚で見れば猫の方が“味わっている”ようにも思えますが、舌にある味を感知する味蕾(みらい)の数は、猫は犬の4分の1程度しかありません(※ちなみに犬は人間の5分の1程度)。つまり犬の方が猫より味覚は優れていることになります。
単独ハンターの猫は、捕った獲物を自分だけのものにできますが、自分よりずっと小さな獲物しか捕まえられないため、一日に何度も狩りをし、少量を回数食べるといった習性があります。
それに対し、大きな獲物を群れで狩る犬は、仕留めたら次にいつまた大物に遭遇できるか分からないため、食べられるときに食べておこう、躊躇していたら仲間に全部食べられちゃう、と一気に食べようとする習性があるのです。
犬が猫に比べ食欲旺盛に見え、ごはんを食べた後でもなおおやつや美味しいものに目がないのには、こういった動物の本能が関与しているといえるでしょう。
ペットの習性を考慮した食事管理を
また、人間よりも満腹中枢が鈍く、野生で捕まえた獲物であれば食べること自体に時間を要しますが、食べやすいペットフードはすぐに食べ終わってしまうため「満足感を得にくい」ということも考えられます。だからといって、欲しがるままに与えるのは当然NG。
「良いじゃない、食欲旺盛で幸せそうに食べるんだから、我慢させるなんてかわいそう!」と思われる方もいるでしょう。でも何も、目の前に出されたものをオアズケして我慢させているわけではないのです。人間のように、戸棚や引き出しを勝手に開けてお菓子を取り出すことができないペットは、人が与えなければ、それは「無い」というだけで、我慢させることにはなりません。要求吠えや「ごはんを食べなければ美味しいものが出てくる(´・ω・`)←こんな顔」ということを学習させてしまっているのなら、この悪しき習慣を改善することが先決です。ただしそこには、ペットとの根競べも待っていて、家族一丸となって取り組む必要があり、なかなか一筋縄ではいかないところもあるでしょう。
しかし例えば、我が子が可愛いからと欲しがるケーキや甘いものばかりを与え、ちゃんとしたご飯はろくに食べなくても良しとする親がいたら、それは愛情と呼べるでしょうか?
子供は知識が浅く、大人と違って自分の健康管理を十分にできません。栄養管理は親の責任です。
ペットも同様。いえ、口にするもの全てを飼い主さんに委ねている以上、ごはんの量や回数、おやつのカロリーなど、判断を間違えて病気や寿命を縮めてしまうようなことは、避けなければなりません。
美味しい食事で満足させたい、喜ぶ顔が見たいというのは、もちろん分かります。しかしペットにとって、そして飼主さんにとって一番の幸せは、“少しでも長く健康に一緒にいられること”ではないでしょうか?
何も嗜好性の高い「食事」だけが喜びではありません。「食事」以外の“喜び”や“絆作り”を積極的に築いていきましょう。
ゴハンと運動で無理のないダイエットを
さて、長々となかなか肝心の“具体的な管理方法”には触れず書いてまいりましたが、正直、どう〆ていいものか迷っています(笑)
実のところ、特に取り立てて画期的な方法があるわけでもなく、『カロリーを意識し、むやみに上げすぎないようにする』・・それだけだからです。
しかし、「摂取カロリー(食事からとるカロリー)>消費カロリー(運動や基礎代謝で使われるカロリー)」が太るからといって、極端なカロリー制限は禁物です。食べ物を急激に制限すると、骨や筋肉にまで栄養がまわらず細胞が飢餓状態となり、次に食べ物が入ったら少しの栄養分でも脂肪として体に蓄えようとする“生存本能”が発動し、逆に太りやすい体質を作ってしまうことにもなるのです。
ペットシッタースクールの講師でもありますグラース動物病院の院長小林先生曰く「無理のないダイエットをするためには、1ヶ月の減量を全体重の5%以内にとどめ、中間目標を設定(例:15kgから10kgに減量するなら、いきなり10kgサイズの必要カロリーを与えるのではなく、まずは12.5kgと設定し、達成したら再度カロリー計算するように)し、体に無理のかからない程度の運動なら積極的に取り入れましょう」とのこと。
また、「ただし減量にあたっては100g単位で厳しくなる必要があります。5kgの犬にとっての100gは50kgの人間の1kgに相当しますので、少なくとも週に3回は体重チェックをするように」とのことですので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
肥満は関節疾患から糖尿病、心臓疾患、ガンなど様々な病気の温床となることから、肥満自体を病気と捉える獣医さんもいます。
ペットの場合、運動による減量度はそう高くはありませんが、運動して筋肉をつけることで、消費カロリーの7割以上を占める基礎代謝(何もしなくても消費されるカロリー ※基礎代謝の4割は筋肉で消費される)をUPすることができます。
季節によっては(寒い、暑いなど)、どうしても普段のお散歩も短くなりがちで、運動量の減少にもつながってしまいます。健康面に配慮しながら、飼い主さんも一緒にダイエットに挑戦するような気持ちで、ペットの生活習慣病予防に取り組んでいけたらいいですね。
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