「ペットは家族の一員」ですから、当然家の中は自由に、寝るときも一緒の布団で、という飼主さんも多いでしょう。
スペース的な問題もありますが、サークルはちょっと・・と苦手意識をもたれている方の中には、「狭いハウスはかわいそう」「サークルに閉じ込められて自由を奪ってるみたい」と、“家族の一員”と“犬の擬人化”を混同させてしまっている方もいるかもしれません。
犬にサークルが適している?
しかし、もともと穴倉で暮らしていた犬にとって、四方が囲まれた狭い場所は、外敵から身を守ることができる安心な場所です。
広い場所の方がかえって不安なことも多く、特にお留守番のときなど『この家全部が自分のテリトリーだから守らなきゃ、あっちは大丈夫かな、こっちはどうかな‥』といったように、不安と緊張の連続ということもあるのです。
自分のテリトリーを守ろうとする犬の習性にとって、サークルは適しているといえます。
サークル嫌いにさせる要因
閉じ込めちゃうのはかわいそう、というのはあくまで人間の価値観で、またその考えがあるからこそ、せっかくのサークルやクレートを罰として使ったり、構ってあげられない時だけ入れるなどして、犬をサークル嫌いにさせる要因にも繋がってしまいます。
サークルで問題行動も解消?
もちろん、サークルがなくとも犬にとって快適な住環境であれば何も問題ありません。
しかし無駄吠えや無駄噛みなどストレスからくる問題行動や留守時のイタズラなど、犬のプライベート空間(安心して眠って落ち着くことができる犬の居場所)を作ることで改善されるケースも意外と多いのです。
ここで、擬人化ならぬ、擬犬化してみましょう。体育館の真ん中に、たった一人で布団を敷いて眠れますか?…ヒューッ‥という風の音…不穏な足音…まだ狭い用具庫で横になった方が落ち着きますね。
ということで、せっかくならサークル・ハウスを安心できる好きな場所にさせてあげましょう。
サークルトレーニングの考え方
パピーの頃からクレートやサークルに慣らしていれば難しいことはないのですが、成犬、それもサークル嫌いのコに教えていくには、それなりに根気がいります。
サークル・ハウスに入ると楽しい、美味しい、など『いい事が起きる』ことを教えていくわけですが、前述のように犬が粗相をした際に“罰として閉じ込めておく場所”として使っていたような場合には、『無理やり入れられて叱られて隔離される』というネガティブ三大要素が詰まっているため、いくらハウスにおやつやオモチャを入れたところで、そこには「好き」と「嫌い」の壮絶な綱引きがあります。
ワンちゃん自ら入りたくなる工夫とトレーニングを
ですので、焦って無理やり入れてそこでおやつをあげたりするのは逆効果です。
徐々にコングや大好きなおもちゃ等で誘導し、犬自らが近づくように仕向けることが大切です。
①サークルの近くまで来れたら、そこで遊びをスタートしたりおやつを与え、少しずつ警戒心を解いていきます。
②サークルの扉付近におやつを置く、ちょうど出入り口のところ、入らなくても首を伸ばせば食べられる位置、とおやつをサークル内部に近づけて行き、いよいよ入らなきゃ取れないという位置まで放り込みます。
③ここまで近づくことができれば、大抵のコはおやつに興味を示し、恐る恐るでも取りに行こうとするでしょう。しかし、ここですぐに入れてしまっては芸がありません。あらかじめ犬にリードをつけておき、そろそろと入ろうとしたところで「おいで~」とサークルから引き離してしまいます。この動作を何度か繰り返すと、じらされた犬は余計おやつやコングに意識を集中させ、「中に入りたい!」という欲求が膨れ上がります。そう、障害が大きければ大きいほど燃え上がる、恋のサークル“ロミオとジュリエット大作戦”です。
サークル内が落ち着ける安心できる場所になる
やっと入れた犬は、美味しいものがあってオモチャがある空間から、今度は出ようとしなくなるかもしれません。定期的にハウスやサークル内で『いいこと』を起こし、“自分だけの空間”を受け入れ満足してくれるようになれば、犬にとっても飼主さんにとっても大変心強いものになるでしょう。
お留守番の大半をペットは眠って過ごすわけですから、安心できる場所に越したことはありませんね。
サークルの広さは犬の大きさによって異なりますが、ハウスに関しては人間のように「もっと広い部屋を」「もっとたくさんの部屋を」なんて価値観は犬にはありません。フィットする一部屋があれば十分です。
そう、これが本当のワンルーm・・・いえ、やめときましょう。
by 倉西