昨日、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」で、熊本の小さな村で『人を助ける犬』を育てる、災害救助犬訓練士の開田宏さん(57歳)の特集をやっていました。
開田さんは、東日本大震災や熊本地震など数々の災害現場に出動し、250を超える現場で30名の行方不明者(そのうち生存者は8名)を発見するなど、多くの名犬を育ててきたこの道33年のベテランです。
災害救助犬の訓練は『楽しい』『遊び』の延長で行う
現在では、警察犬や災害救助犬の訓練は、家庭犬の「しつけ」同様“褒めて”トレーニングを行うのが主流ですが、ここでもそれは徹底されていましたので、ご紹介します。
「訓練ってかちかちに考える必要はなくて、基本(犬には)遊びなんですよ」と、開田さんは自分も犬も「楽しく」あることが大切といいます。
一緒に探せて『楽しい』、見つけることが『喜び』という訓練の下地があるからこそ、何時間探しても見つからないことがほとんどの過酷な捜索現場で、犬はモチベーションを維持しながら、粘り強く捜索できるようになるのです。
無理やり押し付けない『ゲーム感覚』の訓練とは?
-楽しませる-
「犬を楽しませるっていうことに徹してやらなきゃいけない」
「犬のモチベーションは押し付けでは保てないっていうのが、訓練じゃないかと思っている」
その言葉の通り、開田さんの訓練はまさに犬とのゲーム・遊びの中から構成されています。
訓練では、救助現場を想定した藪の中に人が隠れるのですが、このとき行方不明者役の人は、犬の大好きなボールを持って倒れています。
人間の一万倍以上ある嗅覚で、犬は人の「浮遊臭」を探し当て、発見して吠えるとボールをもらえます。そして開田さんに「よくできましたー」とすぐさま褒められるので、犬にとっては“宝探しゲーム”のような感覚です。
警察犬と災害救助犬による『探し方』の違い
ちなみに、従来の警察犬は、靴が地面にこすれて生じる擦過臭や皮脂の匂いなどで特定の足取りを追いますが、足取りを辿ることが困難な不特定多数の行方不明者の捜索には、人間自体が放つ「浮遊臭」を追う訓練が開田さんによって先進的に取り入れられ、大きな成果を上げています。
しかし、たとえば他の災害現場以上に生活用品の散乱が激しい水害の現場などでは、人の匂いがしみ込んだ衣類や靴、枕カバーなどが犬の鼻を惑わせ、捜索が難しいこともあり、そのような現場では複数頭の犬を用い、それぞれの反応の強弱を見極め断定します。
災害救助犬の育成から「ペットのしつけ」を学ぼう
行方不明者の捜索を行う災害救助犬は、26年前の阪神淡路大震災を機に各地で導入が始まりました。
救助犬としての能力を身に付けるまで約一年半。犬たちは本当に開田さんに懐き、どこに行くにも楽しそうについていきます。
声はかけすぎても、かけなすぎてもいけないといい、この辺も家庭犬のしつけとよく似ていますね。
そして、一日たりとも休むことがない訓練は、訓練自体が遊びの延長ではありますが、最後は必ず犬たちと思いっきり遊び『楽しい記憶』で終えるといいます。
犬や猫と遊んだり、何かを教えたりするときも、ペットがそれ自体を楽しんでいるか、そしてそれがいい記憶で終わるか、ということを意識すると、効果もグッと上がってくるでしょう。
なぜなら、犬や猫が望んでその行動をとろうとするからです。
災害救助犬という、人の命を救う大変な使命を負った犬も、一般に飼われている家庭犬も、行動目的や精神的な喜びといった意味では、本質的なところは同じですね。
さて、遊びといえばお酒くらいしか楽しみのない私が何かを学ぶとしたら、せいぜい二日酔いにならない飲み方くらいですが、こればかりはどんなに訓練を重ねても、いえ訓練すればするほど、その成果が見える兆しがありません・・。
by 倉西