お客様のペットと対面し、すごく若く見えても実はもう7歳や8歳、また10歳オーバーでびっくり!ということも珍しくありません。
いくつになっても愛らしい顔立ちのペットたちは、よほどその行動や体表に変化が無い限りは、変わらず若々しく見えますね。
しかし、保護された年齢不詳の犬や猫を動物病院に連れていくと、獣医さんたちはいとも簡単に「だいたい何歳くらい~」と“推定年齢”を教えてくれます。
いったい何を見て判断しているのでしょうか?
今回は、そんな“ペットの推定年齢”について、見ていきましょう。
まずは歯をチェックしよう①(乳歯編 生後~2ヶ月齢)
明らかに生後数ヶ月の“子犬”や“子猫”であれば、私たちでも(正確な月数は分からなくても)だいたいの察しはつき、間違っても大人と見間違えるようなことはありません。
しかし生後1ヶ月なのか2ヶ月なのか?
はたまた4ヶ月半なのか半年なのか?
と問われると、外貌だけではなかなか判断が難しいのではないでしょうか。
そこでチェックするのが“歯”です。
犬も猫も、生後3週齢頃から乳歯が生え始め、2ヶ月齢で全ての乳歯が生えそろいます。
つまり、まだ歯も生えていなければ3週齢前、小さい歯が少しずつ見えだせば3週齢~6週齢、乳歯がほぼ生えそろう時期が6週齢~8週齢ということになりますので、生後2ヶ月くらいまでなら、乳歯の状態でかなり正確に週齢を見極めらることになりますね。
ちなみに歯が生えれば、母親はおっぱいを吸われるのが痛くて不快になってきますので、この時期に乳離れし離乳食に切り替わっていきます(だから「乳歯」、英語で「Milk teeth」と呼ばれるのですね)。
まさに、ははははばなれのサインなのかもしれません。あ、歯は母離れのサインなのかもしれません。
まずは歯をチェックしよう②(永久歯編 生後4ヶ月~7ヶ月齢)
そして生後4~6ヶ月頃になると、今度は乳歯から永久歯に生え変わっていきます。
乳歯と永久歯の見分け方は、犬なら<乳歯28本→永久歯42本>と本数が圧倒的に違い、猫は<乳歯26本→永久歯30本>と微増(後臼歯という一番後ろの歯が増えるだけ)ですが、いちいち数を数えなくても、細く尖っているのが乳歯、太く先端がやや丸いのが永久歯ですので、すぐに分かるでしょう。
6~7ヶ月齢頃には永久歯が全て生えそろいますので、そこでも一つ年齢チェックのポイントとなりますね。
一歳以降は歯の色をチェックしよう
犬も猫も、1歳頃までは歯は白く輝いていますが、以降は徐々にくすみや黄ばみが出てくるようになります。
2歳頃から奥歯の汚れが目立ちはじめ、3歳を過ぎる頃には全ての歯に歯石がつくようになります。
もちろん、日頃の歯磨きケアの有無にもよりますが、3歳を過ぎた犬猫の約8割が歯周病という統計からも、こうした“歯の汚れ具合”である程度判断できるとみていいでしょう。
そして3~5歳でさらに歯の黄ばみが増していき、色の進行と共に歯の摩耗も進んでいきます。
猫の場合は門歯(前歯)が擦り始めるのが1歳頃からといわれていますので、これもひとつの指標になりますね。
そして、ここからはざっくりっですが、だいたい10歳を超える頃には歯の欠落も見えはじめます。
歯の状態は、高齢になればなるほど歯石が増え、欠落や腐敗が顕著となります。しかし前述の通り生活習慣や個体差によるものも大きく、実際は3歳を超えると、経験豊富な獣医さんでもおおよその年齢(2年ほどの幅を見た)しか推定できないといわれています。
瞳の状態でチェックしよう
犬の場合は、一般的に6~8歳で核硬化症(瞳孔が灰色や白っぽくなる)になるので、シニアかどうかを見極める手助けとなります。
「眼が白い=白内障」と間違われやすいですが、白内障は目のレンズ(水晶体)が白く濁っていく病気なのに対し、核硬化症は年齢を重ねるごとに水晶体が硬くなっていく加齢性の変化であり、たとえかなり白くなったとしても、視力が失われることはありません。
また猫では、専用のライトを当てて水晶体の反射光を見る「水晶体年齢測定法」という方法があり、年齢と共に濁っていく水晶体の反射を見ることで、より正確に年齢をはかることができます。
皮膚で見る犬猫の年齢
人間は“肌年齢”なんて言葉があるように、肌の張りやシミ、表情を構成する際の皺など、剥き出しのもっとも見られる部分なだけあって、『皮膚』で年齢を見られることが多いですね。
しかし犬や猫は、顔を含め体の多くが被毛に包まれているため、「皮膚」に年齢の表れを感じることは、ほとんどありません。
とはいえ、犬や猫も老化に伴い皮膚の弾力性を失い、ところどころ表面が硬くなる角化も亢進し、若い頃に比べて厚ぼったい手触りになっていきます。
また、高齢に伴い免疫力も低下しますので、皮膚にできものが出来やすくもなります。
しかしこればかりは、人間同様“個体差”があり、一概に“皮膚感”や“できもの”の有無だけで、年齢を判別できないところがあるでしょう。歯や瞳に比べると、皮膚の状態から年齢を推定するのは、あまり良い方法ではなさそうです。
被毛で年齢を推定できる?
被毛は、皮膚よりも露出している分目につきやすいですが、人でも若くして白髪の人がいるように、やはり皮膚同様“個体差”の部分は否めません。
しかし、一般的には5~6歳頃から、特に口周りや目の上などに白髪が見え始めますので、被毛に白い毛が顕著なら、シニアである可能性が高いでしょう。
ただし、生後数ヶ月でもストレスや栄養不足などが原因で白髪になることもあり、そのような場合は生活習慣の改善で見る見る若返っていくこともあります。
また、加齢と共に皮脂量が低下するため、こればかりは若い頃の毛艶を知らないと比べるのは難しいかもしれませんが、やはり5~6歳頃から被毛の艶も衰えていきます。若い頃は、もっこもこでふわっふわだった毛質が、シニア期頃から細くパサつきはじめ、特に猫では柔軟性の低下からセルフグルーミングが行き届かなくなり、被毛が束のように毛割れすることも。しかしこれらも個体差があり、やはりおおまかな検討程度にしかならないでしょう。
しぐさで見る年齢
年齢はしぐさや行動にも表れます。若い頃は飛び跳ねるように歩いていた犬猫も、大人になると落ち着き、しぐさもゆっくりになっていきます。
2~3歳くらいまでの犬猫は、体力もあり余り好奇心も旺盛なので、興味の対象を見つけるとキョロキョロとあちこちへ首を動かし、例えば猫なら猫じゃらしや音がするおもちゃにもよく反応するでしょう。
加齢と共にそうした行動は減少し、“わちゃわちゃした動作”も見られなくなっていきます。
“動くスピード”はひとつの指標になりますが、何度も言うように人間でも80歳を超えてフルマラソンを完走する人がいるように、持って生まれた、また生活環境で培ってきた筋力や体力には、個体差があります。
また、犬や猫はもともとよく眠りますが、老齢になると明らかに睡眠時間が長くなり、一日の大半を寝て過ごす様になります。
あまり体力を使うこともなくなり、散歩時間も短くなることで更に筋力低下を引き起こし、疲れやすくなった体はひたすらに睡眠を求めるようになっていきます。
しかし、これらも「老化現象」というだけで、具体的に「何歳になったらどうなる」という判別にはつながりません。それに、ここまでくると、もう「年齢」の推定は大した問題ではなくなってくるのも事実ですね。
以上、『ペットの推定年齢』について、まとめてみました。
そして最後に、今回はテーマが「推定年齢」の割に、“個体差あり”の連呼で、振り返ってみたらちっとも推定できていなかったかもしれませんね・・σ(^_^;)
ペットが何歳だろうと、そして何歳から迎え入れようと、これから一緒に過ごすかけがえのない時間の積み重ねこそが、本当のペットの“幸せ年齢”なのかもしれませんね。
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